Anonymous Animals
Personal work
2021 spring
design
Illustration, Editorial design, Fontdesign, Booking, Writing: Okamoto Reiko
Printed: Hand Saw Press
Paper: Satogami (Tokusyu Tokai Paper),
Tablo (OJI F-TEX)
動物寓意譚を中心に、中世キリスト教社会の動物21種を描いたイラストZINE。
動物寓意譚とは、12世紀ごろの中世ヨーロッパで広く読まれた動物に関する装飾写本のことで、さまざまな動物や植物、鉱物の性質や特徴が紹介したものです。ただし、当時は自然科学はキリスト教の世界観に基づき解釈されており、写本に描かれている姿や記述の多くは荒唐無稽なものです。また写本は非常に豪華で美しいものが多く、キリスト教の布教にも使われていました。
ZINE制作の動機は以下の2点。
・描かれている動物の姿が純粋に面白く、人にオススメしたい。
・日本語で読める動物寓意譚が非常に少ない。
これらから、まずは簡単に読めるZINEを作ることとし、内容に関してはできるだけ原著をあたり、参考文献や参考資料を巻末に記載することで、読んだ人が情報にアクセスできるようにしました。
デザインに関しては、以下の2つの課題を立てました。
①事実を伝えるものとしては無価値である動物寓意譚の表現
②動物寓意譚の歴史的・文化的価値の表現
これらについて、製本、イラスト、書体、印刷それぞれの点からアプローチを行いました。
①に対しては中世の豪華写本と反対となるようなデザインとすることで解決をはかりました。製本はゴシップ紙やタブロイドをイメージし、タブロ紙を用いた中綴じ製本としました。イラストは多色で豪華な絵の具が使用されていた写本に対し、黒一色で単純な形とすることで対比しました。また、リソグラフで印刷することで、手で描かれていた写本と差別化しています。
②に対しては中世の美しい文字をもとに作成したオリジナル書体を本文で使用することで解決をはかりました。中世写本の最高傑作といわれる「ケルズの書」の文字を元に小文字を作成する反面、大文字はグラフィカルに仕上げ、中世から現代までの長い歴史を表現しました。また印刷色は中世写本の本文で使用されることの多かった赤と黒の2色としています。
ZINEは主にイベント、ネット通販にて販売しましたが、とても好評で多くの方に動物寓意譚に興味を持っていただくことができました。イベントでは参考文献も持参し、それらについても目を通していただくことが多かったです。
Anonymous Animalsについては今後も個人的に調査、勉強を続け、内容を増やした増補改訂版を出したいと考えています。